器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

お椀の話 〈食器に口をつけて食べる食事作法〉

こんにちはコタツです。

暑い日が続いて休みの日は家でゴロゴロしています。

最近、面白い本を見つけたのでそれを基にお椀の話をしたいと思います。

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発行 吉川弘文館

著者 神崎宣武

「うつわ」を食らう 日本人と食事の文化

日本では器に口をつけて食事をする文化がありますが、それは世界からみると大変珍しいそうです。

近隣の韓国や中国でも、例外はありますが基本的に器は手に持たずテーブルに置いた状態で箸や匙(さじ)を使って食事をします。

私は以前、正倉院展で銀製の匙が展示されていたのを見たので、奈良時代には匙は日本に伝わっていたはずです。なのに匙を使う食事作法は広がりませんでした。

なぜ、匙が広まらなかったのか?

この本では、金属製の匙は当時銀製が一番高価で他には錫製などがありましたが日本は高温多湿のため金属の保管は難しく、錆びてしまった金属は口触りが悪かった事、また杓子など食べ物を掬う道具は木で作られていましたが小型の匙の製作となると非常に手間がかかるし漆などを塗らない削った木のままなので使い込むと木がけばだってきて箸に比べると口の中に当たる面積が大きい匙は口当たりが悪くなるため広まらなかったのではないかと書かれています。

 

それに加えて私の考えでは、金属の食器や匙が広まらなかったのは民衆にとって金属は大変貴重であった事。以前読んだ本で東北地方の農民にとって金属の縫い針はとても貴重なものだったそうです。また、日本は木が豊富な国なので木の椀がよく使われていて、陶器に比べ中の熱が伝わりにくいので持ちやすく、そのまま口に運びやすかったのではないかと思います。

あと、食事を置く高さも関係しているのかなと思います。日本は正座した膝の高さ位の膳を用いて食事します。口から食事が遠く匙で汁を掬うにしても遠すぎてこぼしてしまうため器を手に持って食事をしたのではないかと思います。

まあ、器を手に持つのが先か膳の高さが先かはまた調べてみようと思います。

 

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上の画像の赤い矢印の部分を高台と呼んでいますが、昔のお椀の作り方では高台の内側に針を刺し、木をろくろに固定させて削ったため、必然的に高台が出来るようになっていたようです。

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昔はこんな感じかな?もう少し針も長く真ん中に寄っていてしっかり木を固定できると思います。内側も仕上げた後に高台の中を削っていたようです。

この時の打ち込んだ針のあとが残らないように針の長さに合った高台の高さが必要になったと思われます。

 

ちなみに現在は基本こんな感じです。

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赤い矢印の直径が仕上げるお椀の直径になりま

す。ここに材料を打ちつけ固定し木を回転させ削ります。

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外側を仕上げた所です。高台の中も仕上げます。

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外側が出来たらそれが入る木に食わせて中を仕上げて出来上がりです。

 

高台が出来る事でお椀は持ちやすくなります。多少大きめのお椀でも片手で持ち上げられます。これも、片手に箸もう片手にお椀の食事作法が発達したきっかけではないかと思います。

 

お椀を作る時、重要なのが縁作りです。口につける部分なのでガタガタしていたら口当たりが悪く不快です。

お椀ではありませんが、以前めちゃくちゃ薄い縁の酒器を作ったとき、周囲から「刺さる!」と大変不評で、しかも普段違う器で飲んでいたお気に入りのお酒の味が美味しくなかったのです。それから、自分で器を作る時は縁作りを気をつけているのですがなかなか難しいです。

 

また、属人器と言う言葉があり、これは例えばお父さんの箸、お母さんのお茶碗と言ったように誰の食器か決まっている食文化だそうです。

これは、世界的にも珍しく日本と朝鮮半島だけにある習慣と言われています。日本は特に食器に直接口を付けるので、食器とそれを使う人との関係性はかなり濃いのかなと思います。

今は、コンビニの容器などで手軽に食事をとれるようになりました。私も、コンビニやジャンクフードは大好きでよく利用しますが、もう一度、食べ物と器と自分の関係というか対話のようなものを意識して食事してみようと思います。

 

【参考文献】

「うつわ」を食らう 日本人の食事の文化

著者:神崎宣武

発行所:吉川弘文館