器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

古い鍋をカスタムしてみた。

f:id:cotatumuri-N:20210504111826j:plain
こんにちはコタツです。5月は私の大好きな季節で、うす緑色の若葉に彩られた山々を眺めると自分の中にも生命力があふれて来る感じがして、とてもワクワクします。あいかわらずグータラしていますが、やる気だけは満ち溢れています。^_^

さて、先日古道具屋さんで古い鍋を買ったのでちょっとだけ手を加えてみました。
f:id:cotatumuri-N:20210503234455j:plain
アルミの片口鍋です。おそらく手作業で叩いて伸ばしたであろう鎚目(つちめ)が付いていて良い雰囲気です。

そのままでは持ち手が熱くなるので、持ち手に籐(とう)を巻くことにしました。ネットで調べてほんの少しだけ販売している釣り竿などに巻く籐を買いました。
f:id:cotatumuri-N:20210504000700j:plain
しばらくぬるま湯に浸けてから巻き始めます。
f:id:cotatumuri-N:20210504000951j:plain
f:id:cotatumuri-N:20210504001718j:plain
購入した籐は、3メートルが3つで合計9メートル入っていました。最初3メートルもあれば充分だろうと思っていましたが、すぐに無くなり途中で継ぎ足しました。
f:id:cotatumuri-N:20210504001846j:plain
継ぎ足し位置がブサイクですが、一応完成しました。後になって、もうちょっと太い籐やあけびのツルなんかも野性味が出てよかったなと思いました。今巻いたのが取れたら次はゴツゴツした感じにしようと思います。

続いて簡単なフタを作ろうと思います。
鍋のフタにはどのような木が適しているのかわかりませんが、昔に練習で使った欅(けやき)の材料があるので、大きさが合えばそのまま使いたいと思います。
f:id:cotatumuri-N:20210504002738j:plain
f:id:cotatumuri-N:20210504002744j:plain
楽したいと言う横着な考えを見透かされたように、厚みはちょうどいいけど直径が足りない材料と直径はちょうどいいけど厚すぎる材料が見つかりました。結局厚い材料を挽いて薄くすることにしました。
f:id:cotatumuri-N:20210504003640j:plain
何回か轆轤から外し重さと厚みを確認します。
欅だからか重く感じます。
f:id:cotatumuri-N:20210504004400j:plain
厚みは出来たので次は把っ手を作ります。
f:id:cotatumuri-N:20210504010246j:plain
把っ手も欅の板を使います。
f:id:cotatumuri-N:20210504010237j:plain
形を整えます。
f:id:cotatumuri-N:20210504012240j:plain
後で漆で接着しやすいように接着面を少し窪ませます。
f:id:cotatumuri-N:20210504010242j:plain
こんな感じでいいかな?
f:id:cotatumuri-N:20210504102440j:plain
把っ手とフタに漆を塗ります。
ネットなどでフタの画像を調べると、把っ手はフタの部分に溝を彫り把っ手を差し込むタイプが多かったです。
f:id:cotatumuri-N:20210505105147j:plain
ちょっと暗くて見えにくいですが、赤い丸で囲った部分が溝に差し込んでる部分です。
しかし、そんな器用な技術は持ち合わせていないので、漆で接着したいと思います。

まず、接着剤として麦漆(むぎうるし)を作ります。YouTube先生に教えて頂きましたが、いつもの事ながら超テキトーに作るのであまり参考にはなりません。
f:id:cotatumuri-N:20210504105000j:plain
f:id:cotatumuri-N:20210504104954j:plain
小麦粉を水でいい感じの硬さに練ります。
f:id:cotatumuri-N:20210504105458j:plain
小麦粉と生漆の割合は5:5位にします。
f:id:cotatumuri-N:20210504105451j:plain
小麦粉に少しずつ漆を混ぜていきます。
f:id:cotatumuri-N:20210504105446j:plain
よく練れば完成です。

麦漆は欠けた陶磁器を修復する金継ぎ(きんつぎ)にも使われています。あと、もち粉や米粉を火にかけよく練った物と漆を合わせる糊漆(のりうるし)も使われます。

f:id:cotatumuri-N:20210504110722j:plain
把っ手に麦漆を塗ります。
f:id:cotatumuri-N:20210504110727j:plain
この辺かなと思う所にえいっ!とくっ付けます。
後にこの安易でテキトーな作業が事件?を起こす事になります。(笑)
f:id:cotatumuri-N:20210504110732j:plain
ちょっとはみ出したけど、まあいいか。
f:id:cotatumuri-N:20210504111522j:plain
麦漆が固まったらペーパーで全体を軽く研ぎます。
もう一度漆を塗って完成です。
f:id:cotatumuri-N:20210504112351j:plain
f:id:cotatumuri-N:20210504111820j:plain
f:id:cotatumuri-N:20210504111742j:plain

早速、この鍋で野菜たっぷりのトマトスープを作りました。
f:id:cotatumuri-N:20210504112536j:plain
f:id:cotatumuri-N:20210504115452j:plain
野菜を鍋に入れ火にかけていると異変が…。
f:id:cotatumuri-N:20210504113937j:plain
なんとフタが熱によって反りはじめたのです!
f:id:cotatumuri-N:20210504114148j:plain
f:id:cotatumuri-N:20210504114142j:plain
まっすぐだったフタの木はどんどん動き、こんな感じになってしまいました。
とりあえず、フタの事は後で考えるとして、トマトスープは美味しく出来上がりました。

この鍋を古道具屋さんで見た時に片口から器にスープやカレーを流し入れたいと思ったので、やってみました。
f:id:cotatumuri-N:20210504115519j:plain
当たり前だけど、具が出ず汁しか出ない…。
f:id:cotatumuri-N:20210504115718j:plain
普通に杓子ですくって入れました。
流し込むなら具無しのポタージュスープとかが良いですね。
と言う事で、本来ならこの記事はこれでおしまいなんですが、反り返ったアイツ(フタ)の事をそのままにはできないので、もう少しお付き合い下さい。

木を扱う仕事をしてる人なら当たり前のことで、「こいつバカか?」と思われるはずですが、バカなりにいろいろ考えてみたいと思います。
木に熱をかけるから多少は動くだろうと予測していましたが、あんなに反り返るとは思っていませんでした。使った材料は、熱乾燥はしていませんが最初の状態になって10年は経過しています。
また、仕事で失敗した木の皿を漆を塗らずに使うと水洗いした時に反ることがあるけど、次の日木が乾燥するとほとんど元に戻っています。ですが、今回のフタは次の日もそのままでした。(T-T)
f:id:cotatumuri-N:20210505111915j:plain
次の日のアイツ(フタ)

木の乾燥不足が考えられます。今回の反り返りを防ぐなら、最初の薄くする前の段階で、鍋のフタにして先に充分動かしてから薄くすると良いのかなと思います。
木の乾燥の話もいずれしたいですが、実際に私が木地仕事を始めてから一番多い失敗が乾燥にまつわる話です。

木の乾燥だけで無く、めちゃくちゃ動いた原因に把っ手の付ける向きもあると思います。
なんとなく木目と同じ方向がきれいかなー。なんて考えてテキトーにくっつけましたが、後で、いろいろな木のフタを画像検索すると、そのどれもが木目と直角に把っ手が付いてるではありませんか!
f:id:cotatumuri-N:20210505113358j:plain
このフタで言うと赤い線位の向きが良いかと思われます。
ですよねー。木の動く方向はだいたい決まってるんだからそれを抑える方向にするってちょっと考えたらわかるはずなのに。(~_~;)

あと、他の画像見てみると一枚の板で作られてるフタもありましたが、何枚かの板を並べてたり真ん中で違う材料を繋げているものもあり、材料の関係もあると思いますが、材料が細いほど動きも小さくなるから都合がよかったのかな?なんて考えてしまいます。

とりあえずこのフタはいろいろ楽しかったので今後もそのままで使うことにいたします。

でも商品や注文品じゃなくて本当によかった!商品なら大クレームやわ!