器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

米の調理法

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こんにちは、コタツです。

先日まで、10月にしてはものすごく暑かったのですが天気予報で言っていた通り急に寒くなり、扇風機を片付けると同時にファンヒーターを出しました。
暑いのも寒いのも苦手な私は、春と秋だけが楽しみなのに「秋飛ばして冬になるなんて何かの嫌がらせかなー」とファンヒーターの前で丸くなりながら考えています。

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前回、弥生時代の稲作道具である石包丁を作りましたが、今回は米の調理法の話をしたいと思います。

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現在の日本では、米を炊く時に炊飯器を使う事が多いです。
場合によってはカマドや鍋を使うこともありますが、いずれも炊き上がりに余分な水分が無くなるように計算して水を入れて米を炊きます。
このような米の炊き方を「炊き干し法(たきほしほう)」といいます。

それに対してたっぷりの水で米を茹でて余分な水分を捨てる調理法を「湯取り法(ゆとりほう)」といいます。

湯取り法で米を茹でてみました。
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米0.5合に水をたっぷり入れて火にかけます。

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だいたい20分茹でたら茹で汁を捨てます。

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再び鍋に戻し少し蒸らして出来上がりです。

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米のモチモチ感や粘りはあまりありません。誰かが言っていたけど、一度洗って表面の粘りを取った感じで炊き干し法よりあっさりした味わいです。
モチモチ感が無いので少し物足り無く感じますが、これはこれでおいしく食べられます。

炊き干し法が出てくるまで湯取り法が一般的でした。それは、調理の場所が主に囲炉裏であった事と庶民は米に麦や稗などの雑穀を入れたカテ飯が主流であり雑穀を調理する為に大量の水で雑穀をふやかして茹でる方法が向いていたからだと考えられます。

やがて、かまどが登場し本来湯を沸かす道具であった釜で米を炊くようになります。
江戸時代くらいから徐々に炊き干し方が広まっていったそうです。
かまどは西日本で広がり東北地方には羽釜の普及はだいぶ遅れ炊き干し法が一般的になったのは近年だそうです。
東北地方が長い間かまどを使わず囲炉裏中心の食生活だったのは寒冷な気候も要因の一つと考えられています。

そして、この湯取り法は割と世界ではメジャーな調理法で、長粒米のタイ米やバスマティライスなどは湯取り法で茹でる事が多いみたいです。
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タイ米を湯取り法で茹でてみました。

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茹で時間をちょっと失敗したけど粘りが無くてパラパラしていてカレーにものすごく合います。
カレーに対してご飯がかなり多かったけど、あっさりしていたので最後までおいしく食べられました。
おいしさがクセになりそうで、今度違う種類の長粒米を買っていろいろなカレーを食べてみようと考えてます。

また、湯取り法はでんぷん質の茹で汁を捨てるので糖質カットになりダイエットに良いそうです。

それから、前回行った河内長野ふれあい学習館で展示されていた弥生時代の蒸し器からもわかるように米を蒸す調理法も広く行われていました。
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1時間ほど水につけた米を皿に入れて火の通りが平均になるように平たくして蒸し器に入れます。

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だいたい25分くらい蒸したらモチモチのご飯ができあがりました。
うるち米を使いましたが餅米のおこわみたいにかみごたえがあってとてもおいしいご飯です。

炊き干し法と湯取り法で調理したご飯を「姫飯(ひめいい)」、蒸したご飯を「強飯(こわいい)」と呼んでいたそうです。

調べたわけではありませんが、「おこわ」は強飯から呼び名がきているのではないかと思います。

最後に、昔の米の保存食「干し飯(ほしいい)」を作ってみたいと思います。

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蒸したご飯を出来るだけ薄く広げます。炊飯器で炊いたご飯でもできます。


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本来は天日干しするそうですが、出したばかりのファンヒーターを使いご飯を乾燥させます。

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一日3時間ほどファンヒーターの前に置いて温風を当てると2日ほどでほぼ乾燥しました。
保存させるにはしっかり水分を抜く必要があります。つまんでみて弾力を感じるなら、まだ水分が抜けきっていません。
しっかり乾燥したものは保存状態にもよりますが、20年持つと言われています。

干し飯の歴史は古く一説には古事記に出てくるヤマトタケルノミコトも食したと言われています。
また、戦国時代は兵士達の兵糧として用いられたそうです。

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乾燥した干し飯をお湯で戻して食べてみることにしました。

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途中何回かかきまぜて40分位待ちました。
すっかり冷めてしまったのと所どころ戻り切らずに堅い部分もあったけど普通にご飯としておいしくいただけます。
昔は、非常時はそのまま食べたり水で戻したりしていたようです。

今回、干し飯作りにファンヒーターを使いましたが後で調べてみると防災食でよく目にする「アルファ化米」の作り方が温風を当てて急速乾燥させる方法だそうです。干し飯の進化したものと言われています。

以前、食べた市販のアルファ化米はきれいに戻ったけど、今回戻すのに時間がかかった理由はなんだろうか?と思いネットなどを調べるとどうも保温が足りなくて時間がかかったようです。
保温水筒などに入れて戻すと割と早く戻るかもしれません。

今年はスーパーでも米の価格が安いです。知り合いの農家さんに聞いてみると、昨年と今年は米が余っていて価格が上がらないそうです。新型コロナで外食産業が低迷したからなどさまざまな理由があると思います。
買う方はとても助かるのですが、大変な苦労をして米を作った農家さんにとっては苦しい状況だと思います。

だから、糖質と言って嫌わずにもっとお米を食べたいと思いました。

〈参考文献〉
めし・みそ・はし・わん
著者:宮本馨太郎
発行所:岩崎美術社

全集 日本の食文化
第三巻 米・麦・雑穀・豆
監修:芳賀登
   石川寛子
発行所:雄山閣出版株式会社

〈参考にさせて頂いたサイト〉
丸ごと小泉武夫食マガジン
https://koizumipress.com/archives/10350

JBPRESS 食の研究所
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40806

尾西食品株式会社
https://www.onisifoods.co.jp/about/