器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

柿の木材の話

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こんにちはコタツです。 
今年は、我が家の庭の柿は豊作で、昨年のように人間vs鳥vsその他小動物での争奪戦も起きずに仲良くおいしい柿を堪能しています。
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昨年このブログで柿の話をしました。今年は柿の木材の話をしたいと思います。
www.utuwa-tabemono.com

柿の木材は通常やや白っぽい色をしていますが、ごく稀に黒い模様が入った木があります。
これは、樹齢150年以上の古い渋柿の樹芯が炭化した硬質材の事を指し一般的に「黒柿(くろがき)」呼ばれています。
柿の品種にも黒柿がありますが、木の黒柿材とは違います。
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奈良県五條市柿博物館にて。

木の黒柿は必ずしも古い木が黒柿になるわけではなく、1万本に1本位とも言われています。
しかも、木を切ってみないと黒柿かどうかわかりません。
日本では古くから貴重な黒柿が珍重され正倉院の宝物にも黒柿を使った工芸品があります。

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正倉院宝物「黒柿蘇芳染金絵長花形几(くろがきすおうぞめきんえのちょうはながたき)」

これは、黒柿の表面を蘇芳(すおう)と言う赤褐色の染料で染めています。

また、正倉院の中には桧(ひのき)などの材に黒で黒柿っぽい模様を描いた仮黒柿(げくろがき)と言う技法を用いた宝物もあります。


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黒柿材いろいろ。
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くっきり黒と白に分かれています。

木によって模様は違いますが、一応模様の出方でざっくり分けられそれぞれ呼び名はあるそうです。
その中でも孔雀杢(くじゃくもく)と呼ばれる孔雀の尾羽のような模様が入った黒柿は最高ランクで価値が高いです。
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孔雀の尾羽の画像。

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きれいな模様だけど孔雀杢とは違うのかなー。

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師匠が作った香合。
かなり細かい杢が入っていてきれいです。

黒柿はとても人気で黒柿で作った工芸品ばかり集めてる人もいるほどです。

しかし、黒柿は黒と白の部分で硬さが違い乾燥による収縮に差が出るためか、非常に割れやすく乾燥が難しいそうです。

まず、水に何年か浸けておくそうです。その後水から煮るなど工程を経て割れないように乾燥させます。

知り合いの茶道具を作る職人さんは、いざ黒柿の注文が入った時に「木の乾燥まで4〜5年待って」とは言えないので、すぐ作成できるように乾燥した棗(なつめ)などの薄茶器(うすちゃき)用の材料は常に確保していると話されていました。


ここまで、貴重で人気な黒柿の話をしましたが、黒くない普通の柿の木材は弥生時代の稲作跡から杭(くい)として柿の木が使われていたことがわかっています。

また、100年程前にゴルフのクラブのヘッド部分にパーシモン(柿)が使われていました。
現在では、ほとんどチタンなどの金属に変わりましたが、当時は硬すぎず柔らかすぎず、しかも加工しやすい柿材がクラブのヘッドに最適だったようです。

最後に柿の木にまつわる古くからの伝承には死に関連するものが多くあります。
「柿の木から落ちると3年後に死ぬ」
「死体をたくには柿の木に決まっている、だから平常は決してたかない」
「遺骨を火葬場で拾う時は、柿の木の箸を用いる」
なぜ、このような言い伝えが全国各地で見られるのかはわかりませんが、砂糖の無い時代に柿の実の甘さは貴重だったり、柿渋も大切に使われていたので、その実をつける柿の木は無闇に切ったり焚き木に燃やして使わないようにと言う戒めではないかと思いました。

私たちが、秋をイメージするとすぐに「柿」が思い浮かびますが、柿は長い時間日本人の生活に寄り添って来たのだなと感じました。

〈参考にした資料など〉
木 なまえ•かたち•たくみ
著者 白洲正子
発行所 株式会社平凡社

柿の信仰と伝承
著者 永野忠一
発行所 習俗同攻会

柿の民俗誌ー柿と柿渋
著者 今井敬潤
発行所 株式会社 現代創造社

第62回「正倉院展」目録
発行所 財団法人仏教美術協会

和じかん.com
https://wajikan.com/note/kakinoki/