こんにちは、コタツです。
12月も半ばになり、近所のスーパーでもちらほらお正月用品を見かけるようになりました。
今も昔もお正月は日本人にとって大切な行事であり、これから始まる1年が良い年になるようにと願いを込めた様々な習慣が各地に伝えられています。
その中でも今回は、福岡の博多をはじめ九州各地や本州の一部地域で今も見られる、栗の木で作った祝い箸の習慣について話をしたいと思います。
博多では、お正月に栗の木を削って作った「栗はい箸」と呼ばれる箸でお雑煮を食べる習慣が残っています。
博多の歴史や風習を西島伊三雄さんの絵で紹介した「博多いろはかるた」に栗はい箸が紹介されています。
お正月が近づくと、山で栗の木の枝を採ってきて自分達で削って作ったそうです。
手作りだけでなく市場や道の駅などでも売っています。
栗の木にこだわる理由は、「くり」の読み方にかけて万事繰り合わせが良くなる縁起のいい木と考えられています。
栗の枝の皮目を残して両端を細く削る場合や、片側だけ細く削る場合など、地域によって違いがあります。
また、お雑煮のお餅を食べる時に箸が折れると縁起が悪いので、太めの箸が良いそうです。
先日、栗はい箸を見てみたいと思い福岡に行って来ました。
しかし、お正月にはまだ早かったのか栗はい箸はどこにも見当たりませんでした。(T . T)
博多駅にある阪急百貨店を訪れた時も、お正月の商品が売り出されていて祝い箸のコーナーを見て回りましたが、栗はい箸は売っておらず一般的な祝い箸が並んでいました。
せっかく博多まではるばるやって来たのにと泣きながら(笑)せめて一足早い正月気分を味わおうと博多のお雑煮専門店で博多雑煮をいただきました。
博多のお雑煮は鰤の切り身と福岡の伝統野菜かつお菜が入るのが特徴だそうです。
かつお菜は大根の葉に味が似ていて、あっさりした汁に少し苦味のアクセントが効いておいしかったです。
その後、奈良に帰ってからも栗はい箸が気になって仕方がなくあれこれ調べていると、京都の箸専門店で栗はい箸に似た箸が紹介されていました。
京都の四条通りから少し入った所にある「御箸司 市原平兵衞商店(おんはしし いちはらへいべいしょうてん)」です。
店内には、様々な箸が所狭しと並んでいます。
その中で栗枝箸(くりえだはし)として紹介されていたのが、この記事の冒頭に画像をのせている栗箸です。
お店の方に少しお話しを伺ったところ、先代の店主が福岡まで行ってお正月が終わり売れ残った栗はい箸を買取って、形がバラバラなため多少手直しをして売り出したのが始まりだそうです。
市場などで売られていた形もバラバラで自由に削られた商品を形を安定させた製品にするのは、割と手間がかかる作業ではないかと尋ねると、「そうなんですよ」と話されていました。
栗はい箸は人々の習慣のなかで続いている文化で多少商品としてあるものの、産業とは離れた位置に存在するモノであると思いました。
お正月に家族が元気に幸せに過ごせるように願って、それぞれの家庭が山に栗の枝を採りに行き箸を削りました。
他の木ではダメで栗の木でなければならないのです。
栗に限らず、日本各地ではそれぞれの木が持つ力を信じて箸や器を作る習慣がありました。
しかし、その習慣を続ける人がいなくなると、知られる事なくモノも消えていくと思います。
現在では科学も発達して木の力で無病息災を願うなど非現実的な考えかもしれません。
しかし、木だけでなくモノに込めた力を信じてモノづくりを行い、使う人もその思いを大切にモノを扱う。この関係性がこれからの世の中には大切な気がします。
あまり上手く表現できませんがこの考えは、ブログや私の器作りの軸になっているので、今後も時々このような話はすると思います。
来年こそは栗はい箸でお雑煮を食べたいなぁ!
〈参考にさせていただいた本やサイト〉
箸の民俗誌
著者 斎藤たま
発行所 論創社
めし・みそ・はし・わん
著者 宮本馨太郎
発行所 岩崎美術社
https://wakky.jp/2018/12/10/blog-209/
福岡の脇山地区の産直市場のブログです。
栗はい箸の紹介画像があります。