器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

吉野杉のお椀を作る。 

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こんにちは、コタツです。
3月に入り寒さが和らぎウキウキする季節ですが、コロナのせいであまり出歩けずモヤモヤした日々を送っています(T ^ T)

さて、先日お伺いした上大木材産業株式会社(うえおもくざいさんぎょうかぶしきがいしゃ)さんで杉とヒノキの材料を少し分けていただきました。
今回は杉を使ってお椀を作ろうと思います。

ヒノキは何度か使ったことがありますが、杉はほとんど使った事がありません。

上大さんによると、杉は柔らかくて欠けやすいためあまり轆轤(ろくろ)による器作りには向かないのではないか?と話されていました。とりあえずどんな感じか作ってみたいと思います。

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正方形に木を切ります。

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断面。均等に木目が詰まっています。横木なので木表と木裏を確認して轆轤(ろくろ)にセットします。
木表と木裏の話はこちら↓
www.utuwa-tabemono.com


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本当は角を落としてから回転させた方がいいですが、そのまま削ってみます。

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キャー怖い!飛んでこないでねーっ!
角が当たったらめちゃくちゃ痛そう!

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少しづつ削ります。飛んで来るのが怖くてガッツリ削れません。

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だいたいの形が出来た所。
木の木口(木を輪切りにした切り口)の部分がボソボソになり結構深い穴が開いています。

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仕上げ用の刃物をあててきれいにしてみます。

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少しづつきれいになって来ました。

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ちょっと時間がかかったけど、ボソボソは全部取れてきれいになりました。

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中も仕上げます。

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完成しました。
中々いい感じに仕上がりました。杉の柔らかさを考えたらフチの厚みもこれくらいがいいかなと思います。

後日、轆轤の師匠に杉を削る時のコツを聞くと、普段よく削るケヤキの時より刃物を薄めにするとボソボソになりにくいと教えて下さいました。

ボソボソが多いほどきれいにするのに時間のロスが出るので、数多く作る時は刃物も考えないといけないと思いました。

ここからもう少し工程を加えて私の考える吉野らしいお椀を作ってみたいと思っていますが、それはまたの機会に紹介します。


今回紹介した杉やヒノキは針葉樹(しんようじゅ)で普段私がよく使うケヤキや栃(とち)などは広葉樹になります。

針葉樹は冬になっても葉が落ちずに緑色をしている木がほとんどです。そして、針葉と言うだけあり葉っぱが針のようにとがっていて、木の形も枝は出ますがまっすぐなものが多くクリスマスツリーのような形をしています。
ですが、例外もありイチョウは針葉樹ですが冬になると葉が落ち葉の形もとがっていません。

それに対して、広葉樹は冬になると葉が落ちるものが多く、葉っぱの形も楕円形でギザギザしたものや様々な形をしているものが多いです。木の形も横にこんもりと広がる形で伸びていきます。

この二つは見た目だけでなく細胞の造りが違います。針葉樹は割と単純な造りをしていて細胞の密度が低く穴が多く開いているため軽いです。広葉樹は針葉樹より複雑な造りをしていて細胞の密度が詰まっているので固く重いのが特徴です。

杉やヒノキはまっすぐなので建築の柱に使われることが多いです。また、軽くてよくしなるので桶やわっぱなどのの材料に使われています。
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今回杉でお椀を作ってみて感じたことは、杉はお椀づくりに適していないと言うより、お椀よりもっと適した使い道があるからあまりお椀の材料として使われなかったのかなと思いました。
あと、板目を合わせる升と違いお椀だとどうしても木口面が出るため、そこから水がダダ洩れするので漆などで漏れを防ぐ処理が必要になってきます。
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升。板の面が内側に合わさってるので水が漏れない。
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木口面は束ねたストローみたいなもので水がダダ漏れ。

白木地で使えない点や板で使うことで持ち前の良さを発揮する杉がお椀作りには向いてない点だと思います。


一方でヒノキもお椀以外の使い道がたくさんありますが、昔に作られた貴重な漆器椀の素地はヒノキが使われていることが多いです。
ヒノキは神社などの建築材料にも使われ耐朽性があり狂いが少ないため、ここぞという時にお椀の材料としてヒノキが使われたのではないでしょうか。


吉野杉の木目の細かさはとても美しいので、そこを活かせる器作りができるように頑張りたいです。