こんにちは、コタツです。
夏は毎年恒例の「暑くて何もする気がしない」と言う理由からブログの更新が滞っておりました。
まだまだ暑い日は続きますが、少しは涼しくなってきたのでそろそろ動かないと今度は「寒いから動けなーい」などとふざけたことを言い出すと思うので、まじめに頑張ります。
先日、全国で唯一の茶筌(ちゃせん)作りの産地、奈良県生駒市高山町(いこましたかやまちょう)に行ってきました。
生駒市は、奈良県の最北部で大阪と京都に近く、特に大阪のベッドタウンとして住宅が立ち並ぶ割と賑やかな街並みです。
しかし、高山地区に近づくと竹林が増えていき、のどかな風景が広がります。道沿いには茶筌と書かれた看板もちらほら見えます。
高山竹林園を訪れました。
こちらは広場や遊歩道があり、お散歩などが楽しめます。
園内には珍しい品種の竹がたくさん植えられていました。
最初「草かな?」と思いましたが竹でした。
本物ではありませんが、細かいところにも竹のデザインが使われていてオシャレです。
園内にある、茶筌の資料室に入りました。
許可得て写真撮影をさせていただきました。
高山地区での茶筌作りの歴史は、室町時代中期から始まりました。 この地を治めていた鷹山氏(たかやまし)によって鍋などの焦げ付きを落とす道具の筅(ささら)をもとに茶を撹拌する道具として考案されました。
茶筌作りは、鷹山家の秘伝で一子相伝の技として現在まで続いてきました。
展示室は、それほど広くはありませんが、さまざまな形の茶筌や制作工程がわかりやすく展示されていました。
茶筌の他にも、高山地区で生産されている竹を使った茶杓(ちゃしゃく)、柄杓(ひしゃく)などの茶道具や毛糸の編み針が展示されていました。
茶道の流派の一覧表。
日本の茶道は、千利休の子孫による三千家(さんせんけ)と呼ばれる表千家(おもてせんけ)、裏千家(うらせんけ)、武者小路千家(むしゃのこうじせんけ)をはじめ、数多くの流派があるそうです。
流派によって使う竹も違うようです。
煤竹 主に表千家
黒竹 武者小路千家、山田宗辺流
淡竹 裏千家など
今まで茶筌は多少違いこそあっても、ほぼ同じ形だと思っていたので、それぞれの流派によってこんなにも形が違うのかと新たな発見でした。
毎週日曜日の午前と午後に各1時間半、職人さんによる実演が行われています。
この日も2名の職人さんによってそれぞれ違う工程の実演が行われていました。
茶筌は、ほとんどが小刀を使って作られるそうです。
ずっと刃物を使っていると持ち手がだんだん自分の手になじむ形に変わっていくのだそうです。
中でもこちらの竹を薄く削る刃物は切れ味がとても重要で、刃物を表から研いだ時に裏側にカエリ(バリ)が出ます。
通常ならそのあと裏を研いでカエリを取るのですが、こちらの刃物はカエリを残したまま使います。
写真の刃物の刃先に見える白い線がカエリです。 職人さんは、カエリを刃全体に均等につけるのが難しいと話されていました。
カエリを付けることで、適度に刃が竹に引っ掛かり薄く削ることができるのだと思います。
そして、先ほどの刃物を使い穂先を先になるほど薄く削りしごいて丸くなるように形をつける「味削り(あじけずり)」と言う工程が、お茶の味を左右する最も難しく重要な工程で特に秘伝とされてきた部分だそうです。
見学の後、茶室に案内していただきました。
床の間には大きな茶筌と茶釜が飾ってあります。
障子紙が竹の模様で素敵です。
障子を開けると枯山水(かれさんすい)の庭が広がっていました。
枯山水とは、水を使わずに石で水の波紋を表し岩を山に見立てた庭園の事だと教えていただきました。
高山茶筌を使って自分で抹茶を点てる「抹茶体験セット」を頼みました。
ポットが竹の模様でかわいいです。
施設の方は、「作法とか気にせず自由に楽しんで下さい」と話しておられました。
私は、石川の研修所の授業で2年間茶道を教えていただいたので、何とか当時の事を思い出してお茶を点ててみました。
「いざ、参るっ!」
見た目いい感じだけど、うまくできたのかそれすらもわからんっ。
(2年間一生懸命教えてくださった先生何も覚えてなくてごめんなさいっ!)
作法はボロボロでしたが、お茶は高山茶筌のおかげで大変おいしかったです。
庭を眺めながらお茶をいただきました。
この日は台風が接近していたため割と強めの風が吹いており庭の向こうの竹がザーザーと音を立てて揺れているのが非常に風情がありました。
茶道において茶碗や茶杓の上質なものは、銘(めい)が付くなどして大切に受け継がれてきました。 それに対して茶筌は消耗品と言う立ち位置で銘が付くことは無いそうです。
しかし、美しい曲線を描いて形作られた様々な茶筌を見て、消耗品と呼ぶにはもったいないぐらい素晴らしい工芸品だなと思いました。