器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

キハダの話

こんにちは、コタツです。
前回の記事から一年以上経ってしまいました。
書きたい記事はいくつかあるのですが、なかなかまとまらず、どれも途中で止まっていました。
これからも少しづつ書いていこうと思っているので今後ともよろしくお願いします。


今回は古くから薬の材料や染色などにも使われるキハダの木の話をしたいと思います。

奈良県御所市(ごせし)にある三光丸薬資料館(さんこうがんくすりしりょうかん)で開催されたキハダの木のワークショップに去年と今年の2年連続参加してきました。


有限会社ポニーの里ファームが企画したイベントです。


2023年のワークショップは、6月24日に開催されました。


梅雨時期のぬかるんだ山道に入って行きます。



キハダの木。
植えてから黄檗が採取できるようになるまで20〜30年ほどかかるようです。



伐採されたキハダの木が転がっています。


皮の剥き方を説明してもらいます。


説明の後は、各々好きな木を選んで皮を剥きます。

まず、木の表面の外皮を剥がします。
紙をめくるように面白いほどペリペリと剥がれます。


外皮が剥がれたら、内皮と木部の間にヘラを入れます。

内皮がシャリシャリと音をたててきれいにはがれます。



面白いほどツルンッと剥けました。


剥がした内皮の部分が黄檗(おうばく)と呼ばれ薬や染色などに用いられます。

黄檗の採取には、木が水分を含んでいる梅雨時期から8月までが最適だそうです。

その他の季節では木の水分が抜けて皮が剥がれにくくなるそうです。



2024年のワークショップの様子。



今回は山に入らずあらかじめ用意されたキハダをテントの下で皮剥きします。




今回は、昨年より少し遅めの7月13日に開催されました。

個体差もあるのでなんとも言えませんが、皮が前回より剥きにくく苦戦しました。



ワークショップの合間にキハダの実で作ったキハダコーラのかき氷を頂きました。


「あまりかけすぎないほうがいいですよ」と言われたにも関わらず、欲張ってコーラのシロップをドバドバかけて喜んで食べてみたら、口中に
漢方薬を振りかけたような味が広がり全部食べきるのにとても苦労しました。

お昼ご飯には、キハダを使った薬膳弁当をいただきました。



キハダの葉の天ぷら。

キハダの葉の白和え。
2023年と2024年ではメニューが少し違いましたが、キハダの独特な味を活かしたおいしいお弁当でした。


キハダカヌレとキハダ茶。

キハダに関する展示。




キハダの実。

キハダの葉

キハダ製品。


ワークショップの後に、会場となった「三光丸薬資料館」を見学させていただきました。







キハダを含めた三光丸の原料の展示。

三光丸は、鎌倉時代から作られ始めた胃腸薬です。

館内はちょっとした体験コーナーもあって、三光丸の歴史や薬の製造方法が楽しく学べました。


キハダを使った薬には古くから有名な「陀羅尼助(だらにすけ)」があります。

陀羅尼助は、このブログでも度々登場する修験道の開祖役行者(えんのぎょうじゃ)が弟子の鬼に作り方を教えたと言い伝えがあります。


役行者ゆかりの地、奈良県天川村の洞川温泉(どろがわおんせん)にある天川村立資料館には、陀羅尼助の製造法などが展示されています。





陀羅尼助を買ってみました。

キハダコーラと陀羅尼助。


後日、ワークショップでいただいたキハダの木で器を作ってみました。




削りクズが鮮やかな黄色です。
この色がずっと続けばよいのですが、残念ながら紫外線にあたると褪色してしまいます。



竪木取りでお椀を作りました。
この木は芯があるので、いずれそこから割れてくるかもしれません。

しかし、以前キハダの丸木を使ったお椀を修理した時も芯に穴が空きましたが、他のケヤキなどの木材と比べて芯を使っても割れにくい印象がしました。

www.utuwa-tabemono.com

続いて芯の部分を避けて横木取りでカップを作りました。





皮目の部分を残して仕上げました。


お椀はいずれ気が向いたら漆を塗って仕上げようと思います。


カップは早速使ってみます。
以前、キハダの皮を煮出した汁を味見したら、強烈な苦味がして悶絶したのですが、何も塗らない木地の器で飲み物を飲むと苦いのか試してみたいと思います。

www.utuwa-tabemono.com



何も塗らない木地のカップにお湯を注ぐと、たちまちカップからお湯が染み出してきました。

横木で作ったので、なんとなく10分位は持つかなと考えていましたが駄目でした。

味を確かめてみると、木の風味がするお湯で
全然苦くありませんでした。
やはり、苦みは皮のあたりにあるようです。


最後に、キハダは古代から盛んに使われていましたが、黄檗を採取した後の木を昔は焚き木や多少は杓子の材料などに用いられていたそうでが、現在では捨てられているそうです。


その木を使って器や杓子などを作るキハダ産業は発展しなかったのかな?と以前から疑問に思っていました。

その事をワークショップの主催の方に聞いてみました。
まず、キハダを伐採する主な目的は黄檗の採取であり、残った木を山から搬出するのはコストがかかるため、あまり行われていないとの話でした。

それに、黄檗を採取する6〜7月は木材利用するのには一年のうち最も伐採に適さない季節です。(水分と栄養分が多すぎて虫に食われやすい)

北海道などでは、キハダを木材利用で伐採されている所もあるようですが、黄檗の採取が目的の場合は木を使うのはおまけみたいな感じがしました。

そこで、利用方法が似てるなと思ったのが漆の木です。
漆も、植えてから10年以上経った木を6〜10月位まで採取されます。
1シーズン採取が終われば木が枯れてしまうので伐採されます。
伐採後は多少は利用されますが、特にこれと言って工芸などに使われているわけではありません。

私は、木地を挽くのでどうしても木を捨てるのは、もったいないなと感じてしまいます。
しかし、昔の人は、それぞれの樹木の1番良い利用方法を見つけ出していたのだなと感じました。

最近では、キハダの実や葉を使ったいろいろな製品が作られています。
黄檗を採取した後の木も今の時代に合った利用方法が見つかるといいなと思いました。



三光丸クスリ資料館
クスリ資料館 | 株式会社三光丸

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