器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

奈良のそうめん食べ歩き

こんにちは、コタツです。 今年の夏も溶けそうなぐらい暑いですね。

毎年この季節になると、あまりの暑さに何もする気が無くなります。 「早く秋よ来い!」と全身全霊で祈る毎日を送っています。

そんな中、涼しくなる食べ物を求めてそうめんを食べに行きました。

奈良県桜井市(さくらいし)は、有名なそうめんの産地です。

桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)のトレードマークの大鳥居。 大神神社は、日本最古の神社とも言われていて大きなの鳥居の奥に見える三輪山(みわやま)がご神体になります。

三輪の地は、そうめん発祥の地と言われています。 大神神社では、毎年2月に「卜定祭(ぼくじょうさい)」と言う神事が行われ、占いで新しい年のそうめんの卸値が「高値」「中値」「安値」と決まるそうです。

三輪のそうめんには、「三輪素麺」と「三輪そうめん」と呼ばれるものがあります。 前者の三輪素麵は「奈良県三輪素麺工業協同組合」に加入している会社のそうめんが、「三輪素麺」、組合に加入していない会社のそうめんを「三輪そうめん」と呼んでいるそうです。

「三輪素麺」は、厳しい品質管理が行われていて、「神杉(かみすぎ)」「緒環(おだまき)」「瑞垣(みずがき)」「誉(ほまれ)」と等級がわかれ、主に麺が細いものほど等級が高くなります。

三輪素麺は、鳥居のマークの帯が巻かれています。

帯の色は3種類あり銀色が「神杉」「緒環」金色が「瑞垣」、黒が「誉」となっていて帯を見ると等級がわかるようになっています。

もちろん三輪素麺工業共同組合に加入していない会社にもおいしいそうめんはたくさんあるので、いろいろ食べ比べて自分の好みを見つけると良いかもしれません。

大神神社周辺には、そうめんのお店や工場が多く立ち並んでいます。

大神神社から車で5分ほどの所にある「株式会社三輪山本」に行ってきました。 工場に販売所とレストランが併設されている大きな建物です。 駐車場には奈良県よりも他府県ナンバーの車が多く見られました。

売店には、いろんな種類のそうめんが置いてあります。

その後レストランで、そうめんをいただきました。 店内は割と混んでいて注文品が届くのを待つ人たちからは、「そうめんは、家でも食べられるけど本場で食べると違うのかなー」みたいな会話が聞こえてきます。 「私もそう思う!」と心の中で勝手に共感していました。

今回いただいたのは、三輪山本の中でも一番細い「白髪(しらが)」と言う名前のそうめんです。

「白髪」と言うネーミングにはぎょっとしますが、太さは0.3mmと超極細麺です。

あまり写真では細さが伝わりませんが、とても繊細な印象で普段食べるそうめんとは食感が全然違いました。

食感抜きにした味わいも、家で茹でるそうめんより格段においしかったです。 さすが本場恐れ入りました!

続いて、大神神社の方向に少し戻り「マル勝高田商店」に向かいました。 おしゃれカフェのような建物の向こうに三輪山が見えます。 暖簾もオシャレ!(語彙力ゼロ)

お店に入ると売店とレストランがあり、そうめんがモダンなパッケージに入ってディスプレイされています。

きれいな庭を眺めながらそうめんをいただけます。

「たっぷりくるみ白つゆ」と言うメニューをいただきました。

そうめんつゆに摺りクルミをたっぷり入れて白味噌で仕上げたスープです。 クルミのコクがとてもよく出ていて担々麵のようなスープでおいしかったです。

他にも、珍しいそうめんのメニューがあったので、近くに来たときは訪れたいと思いました。

その後、奈良市に車を走らせて春日大社(かすがたいしゃ)にやって来ました。

かき氷が食べたいのか、売店の前でたむろする鹿達。

春日大社の参道の中ほどにある「春日荷茶屋(かすがにないじゃや)」。

こちらのお店では、万葉集にちなんだ野菜などを使ったお粥が月替わりで楽しめます。 7月、8月は、薄茶の冷やし粥でした。

今回は、夏季限定のメニュー「春日素麵(かすがそうめん)」をいただきました。 春日素麺は、春日大社に伝わる「嘉儀之饗應膳(かぎのきょうおうぜん)」と言う祝い膳があり、その中からそうめんを梅干しと辛子で食べる古式な食べ方を現代風にアレンジしたものだそうです。

真ん中のそうめんはそのまま食べて、両サイドのそうめんはそれぞれ梅干しと辛子を付けていただきます。

梅や辛子を付けることで、さっぱりといただけて味の変化が楽しめておいしかったです。

さて、お腹が一杯になった所でそうめんの由来について調べてみました。 そうめんは奈良時代に中国から伝わった唐菓子(からくだもの)の索餅(さくべい)と言うお菓子が起源と言われています。

以前食べに行った古代食再現メニュー。 手前のねじったお菓子が索餅です。

www.utuwa-tabemono.com

また、そうめんの材料である麦の栽培は、奈良時代頃から始まったと考えられており、政府が稲作の二毛作として推奨したようです。

三輪山本でも、麦縄と言う名前でそうめんの生地で作った索餅と同じようなお菓子が売られていました。 味は、カチカチに乾燥したミスドのオールドファッションみたいでクセになるおいしさでした。(決してディスってる訳ではありません。)

最初は油で揚げていた索餅を、小麦粉のグルテンの力で細長く引き伸ばして茹でて食べるようになり現在のそうめんへと進化していきました。

うどんやそばのように生地をある程度薄く延ばしてから切り分けて作るのに対して、生地を引っ張って細くするのがそうめんの特徴です。

そして、冬に作られたそうめんが2回の梅雨を経て熟成したものは、「古物(ひねもの)」と呼ばれて新しいものよりコシが強くなるので、価値が上がります。

奈良から発祥したと言われるそうめん作りは全国に広がり、「揖保乃糸(いぼのいと)」のブランド名で有名な兵庫県の播州そうめんや長崎の島原そうめんなど現在も15箇所の産地で作られています。

奈良に来られた時には、ぜひそうめんを味わって下さい!

〈今回参考にさせていただいた本〉

復元 万葉びとのたべもの

著者 樋口清之・萩昌弘・奥村彪生

発行 みき書房