器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

器作りにおける木の話

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こんにちはコタツです。

11月に入りあちこちの木が赤く色づき、中にはすでに落葉してしまった木も見られ自然の世界では冬支度がせっせと行われているんだなと思います。紅葉はとてもきれいだけど、徐々に色彩がなくなっていく景色に少し寂しさを感じます。

 

今日は、私が人や本から教えてもらった器作りにおける木の話をしたいと思います。

大木から材料を作る際、木を取る方向は2種類あって竪木取り(たてきどり)と横木取り(よこきどり)があります。

竪木取りはキュウリの輪切りのように木を切り材料を取ります。

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へたな絵でスミマセン💧見にくいですが、お椀の材料です。

竪木取りは横木取りに比べて歪みにくいので茶筒や茶道の棗(なつめ)などの、ふたがある物を作るのに適しています。

また、木は導管(どうかん)と言って水分や栄養をストローのように吸い上げるため無数の細かい穴が開いていて竪木の場合、導管を漆などでふさがなければ水が漏れてきます。

木の種類によって例外はありますが、木の中心は乾燥に伴う収縮率の差から割れやすいため中心を外して材料を取るので大きな材料が取りにくいです。

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横木取りは木を縦に切った板から材料を取ります。

木は乾燥すると中心から全体的に下の図のように動きます。

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横木取りで器を作る時気をつけなければならないのが、木表(きおもて)と木裏(木裏)の方向です。

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私は、器の内側を木裏にするように教えられたのですが、師匠に聞いてみたところ「あまり深い理由は無いのでは?」との事でした。でも、木が動いた時にこの方向のほうが器の安定性が良いような気がします。逆で作る場合もあると思います。どちらでも良いと思うのですが、仕事で注文を受けた場合は指示された方向で作らないと逆だと売り物にならなくなるので注意が必要です。竪木は特に上下関係無くきれいに仕上がる方を上にしたりします。

上の図にもある通り横木はものすごく動きます。しっかり乾燥した材料を使わないと完成した後に思い切り動いて特に薄い皿とかは、反りかえってしまい困り果ててしまいます。

木によっても育った環境などで、ひねるように動く木や片方だけやたら動く木など様々です。その日の湿度によっても動いたり戻ったりして呼吸しています。

 

また、木は中心部の赤太と呼ばれる部分と外側の白太と呼ばれる部分があります。

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ちょっと見にくい写真ですが、真ん中の色の濃い部分が赤太でその周囲を囲む白い部分が白太です。

白太は新しい部分で水や養分を多く含んでいて腐りやすいし虫にも喰われやすい部分です。赤太は古くなり硬く丈夫なので、多くの木は器を作るとき赤太が好まれますが、普段仕事で使う材料は赤太だけだと高価になるので、赤太と白太半分くらいの物を使います。また栃(とち)の木は赤太に細かい割れなどが入りやすいため主に白太を使うそうです。

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栃の器、手前の色の濃い部分が赤太。

 

昔の人は、一年の暦の中で八専(はっせん)と呼ばれる時期には木の伐採を控えていたようです。八専は奇数月の12日間で毎年変わります。神社などで置いてある暦の本にその年の八専の日にちが書かれています。八専に木を切るとその木は虫に喰われやすくなると言われています。また、木を伐採するには八専を避けた11月が良いそうです。冬に向けて木も葉を落とし養分が少なくなっているので、虫もあまり食べたくないのかもしれません。

 

まだまだ、木にまつわる話はいろいろあるのですが、またの機会にします。

これらの話は私の師匠やいろいろな人に教えてもらったものですが、木について興味のある人はこちらの本を読んでみて下さい。

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『木の教え』

著者 塩野米松(しおのよねまつ)

発行社 株式会社筑摩書房

 

とてもわかりやすい文章で様々な木の話が書かれています。そして、私が描いた絵より遥かにきれいな絵が描かれています。

 

今回、この話を書くにあたり久々に読み返そうと思ったのですが、家中どこを探してもみあたりません。

そう言えば、以前仕事の取引先の人に横木の木表と木裏について何回も聞かれたので、私はこの本をその方にあげてしまったのを思い出しました💦

そして、再び購入したので秋の夜長に読み返しています。

 

木の教え (ちくま文庫)

木の教え (ちくま文庫)

  • 作者:塩野 米松
  • 発売日: 2010/06/09
  • メディア: 文庫