器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

柿の話

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こんにちはコタツです。
秋も深まり、一年の終わりを意識し始める今日この頃です。
我が家の庭に植えてある柿の木も(大家さんが手入れをしてくれます。)10月末頃においしい実をたくさんつけたのですが、近所の野生動物達にもおいしいと評判だったのか、ちょうど食べ頃になると先に採って食べられてしまい少ししか味わえませんでした。(T . T)
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今や葉っぱも落ちてしまいました。
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この柿は富有(ふゆう)と言ってスーパーでも売られている割とメジャーな甘柿の品種です。
以前、近所の人に、「この柿の葉で柿の葉寿司を作りたい」と話すと「柿の葉寿司は渋柿の葉っぱじゃないとだめだ。」と言われました。その時は理由を聞かなかったのですが、渋柿の成分が何か関係してるのかな?と思っていました。
ちなみに、今では一年中売っている柿の葉寿司は、本来柿の青葉が手に入る夏の時期に食べられたご馳走だそうです。
奈良県桜井市にあるお店『山の辺』では紅葉を使った柿の葉寿司を売っていて大変な人気です。
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カラフルな葉っぱに気分があがります。
中身は普通の柿の葉寿司です。でも、こちらの柿の葉寿司はかなりおいしいので紅葉の季節じゃなくてもオススメです。

さらに、柿の事を調べに奈良県五條市(ごじょうし)にある柿博物館に行って来ました。
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奈良県果樹・薬草研究センターの敷地内にあります。
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博物館は巨大な柿の形をしています。
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柿の中に入っていきます。
中にはセンターの敷地内で収穫された柿がずらっと並んでいました。約170種類並んでいるそうです。この時期が一番収穫できる種類が多く見応えがあるそうです。
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係の方に写真のブログ掲載の了承を頂いたので、写真をたくさん撮らせて頂きました。
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豆柿。
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現在の甘柿の元になった御所(ごしょ)柿も様々な種類が並んでいます。
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熟すと模様が入るそうです。
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気になっていた柿の葉寿司の葉っぱについて係の方に聞いてみると、甘柿に比べて渋柿の葉っぱの方が丈夫なのでお寿司を包むのに適しているのではないか?と話されていました。

また、博物館では敷地内で収穫された柿も販売されていて、帰る時買おうと思っていたら、係の方が「売り切れるかも知れないので、今買ったほうがいいですよ。」と言われました。その時見学者は私一人だし、まだ、3パックもあるしさすがに大丈夫やろー。と思いながらも言われるがままに購入してから館内を見学していると、慌てた様子で入って来た人が残っていた柿を全部買って行きました。スーパーには並ばない珍しい品種の柿が売っているので地元の人にも人気のようです。
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この日は『太月(たいげつ)』と言う品種が販売されていました。
名前の通り巨大でりんごのような形です。
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せっかくなので丸かぶり!なぜかお供に牛乳。
大きくてアゴが外れるかと思いました(^^)
ちょうどいい硬さで甘味も割と強く食べ応えのある柿でした。牛乳にも合う!
他にも博物館の敷地内には食べ頃の柿がたくさん実っていました。
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品種は聞くの忘れてしまいましたが、見た目ほどおいしく無いそうです。

その後、柿について少し調べてみました。柿は日本人の生活に古くから関わっていて、弥生時代の遺跡からはカキ属の植物が発掘されていて、栽培に近い状況があったのではないかと考えられています。大きさも現在のような大きな物ではなく豆柿のような小さなものだそうです。
奈良時代には柿を購入した記録が残っていて流通していたと考えられます。
また、渋柿から採れる柿渋は魚の網を強くするため柿渋が使われたり、竹かごに柿渋を塗った和紙を貼り重ねると水が漏れなくなったり、木のお椀の導管を塞ぐ目止めや下地などに柿渋と砥の粉(とのこ)を練り合わせた物を塗ったりします。ちなみに砥の粉は砥石の粉です。柿渋は現在も様々な所で使われています。

最後に私が以前から不思議に思っていた疑問、渋柿から渋が抜けるメカニズムについて調べて見ました。渋の正体はタンニンで甘柿にもあります。渋柿に含まれる「水溶性タンニン」が渋味を感じさせます。それを、アルコールやドライアイスを使い他の物質と結合させて「不溶性タンニン」に変化させる事で唾液で溶けず渋味を感じなくなるそうです。干したり熟しても渋は抜けます。
ただ、加熱すると水溶性に戻ってしまうため再び渋くなる渋戻りがおきるみたいです。最近は技術が発達して渋くならない方法が開発されたので、柿ジャムなどが製造されています。
高校生の時、兄が一時期柿ジャム作りにハマっていて「柿ジャムは難しくて作れたらすごいんや」と話していました。味見はしなかったけどジャムっぽいものが出来ていて、簡単に出来たなと思っていました。たぶん渋戻りが起きるから難しいと言われていたのでしょうね。その後、そのジャムは放置されていたので、完成はしていないと思います。

柿も調べ始めると奥が深いのでこの辺りで終わります。また、材木としての柿の木の話も今後しようと思います。

〈参考文献〉
柿の民俗誌 –柿と柿渋–
著者 今井敬潤
発行所 株式会社 現代創造社