器とたべもの

食べ物や器のことをとりとめなく書いていきたいです。時々木の器を作ってます。

柿の話 2022年

こんにちは、コタツです。

少し前の11月半ばの話ですが、有名な柿の産地でもある奈良県五條市(ごじょうし)周辺では、収穫時期を迎えてたわわに実った柿の色と柿の葉が紅葉した色で山が染まり太陽の光を受けると朱色に輝いているように見えてとてもきれいでした。

車で走っていると道端には「柿」と書かれた看板があちこちで見えて地域が柿一色になる印象です。

そして、このブログでも毎年恒例?の柿の話をしたいと思います。


先日、父が用事で我が家にやって来た時に、ドライブがてら五條市の柿博物館に行ってきました。

www.utuwa-tabemono.com




博物館の入口に、どんぐり位の大きさの柿が実をつけていました。


館内には、今年も多くの柿が並べられており、柿が大好きな父は子供の頃八百屋さんで安く売られていた、外側は普通の柿色で切ると中が黒っぽい柿の品種が無いか探していました。

結局その柿の品種はわからなかったのですが、和歌山に「紀の川柿(きのかわがき)」と言う中が黒っぽい柿があることがわかりました。

そんなわけで、後日和歌山まで車を走らせて紀の川柿を探しに行きました。



京奈和自動車道の下り線パーキングエリアにある「道の駅かつらぎ西」にやって来ました。
気のせいか、入口の暖簾も柿色をしています。



店内には、広い柿コーナーがありました。





おなじみの富有柿(ふゆがき)に始まり、様々な品種の柿が並んでいました。



柿の収穫時期のカレンダー。



探していた紀の川柿も置いてあり、無事に手に入れることができました。


その後、少し車を走らせて「道の駅紀の川万葉の里」を訪れました。


紀の川。
奈良県では吉野川と呼ばれていますが、和歌山県に入ると紀の川と呼び名が変わります。





ここでも有名な富有柿から珍しい柿がたくさん並んでいました。



紀の川柿もありました。

紀の川柿は、渋柿の「平核無柿(ひらたねなしがき)」を木に成っている状態でアルコールを入れたビニール袋をかぶせて渋を抜く方法で作られます。
まだ、青い柿を脱渋した後ビニールの下部に穴を開けて実らせ赤く色付いたら収穫します。

普通の平核無柿を収穫してから脱渋するのとは違い、実は黒く糖度も上がって味も変わります。

この栽培方法はとても手間がかかり、紀の川流域でしか栽培されていないため、この地域の特産品だそうです。



家に帰ってから紀の川柿を食べてみました。
見た目は、普通の柿の色をしています。



切ってみると中身は黒っぽい色をしています。
味は、黒砂糖の味と言われるだけあってコクのある甘さでおいしかったです。



ちなみに我が家の庭の柿の木は、今年は実がほとんど成らず出来た実も台風で落ちてしまい残念ながら収穫0でした。



昨年は大豊作だったので、採れすぎた柿を使って加工品をいろいろ作って見ました。



甘い富有柿ですが、干し柿にしてみました。
アルコール度数の高いお酒で消毒するとカビが生えずにおいしく仕上がりました。







熟した柿にラム酒とシナモンを入れて柿ジャムを作りました。
火にかける時間を長くすると渋くなってしまうかもしれないので、あまり長時間炊かないようにしました。

色はカレーみたいでちょっと微妙ですが、寒い季節に食べたいコクのある甘さのジャムが出来上がりました。

パウンドケーキなんかにかけて食べても合う感じがします。


続いて柿酢を作りました。


柔らかくなった柿や傷んだ部分を取り除いた柿を瓶に入れて、空気が通るようにキッチンペーパーで蓋をして寒い場所で保管します。
毎日1回かき混ぜるのですが、最初はすりこぎみたいなもので柿をつぶしながら混ぜます。
全体が液体みたいになってきたら箸で軽く混ぜます。
やがて発酵して、炭酸のような小さい泡が出てきます。



カビを生やさないように注意しながら約5ヶ月発酵させた物をザルで濾します。


ここで火にかければ発酵が止まります。

熟成した方がまろやかな酢になるそうなので、飲み終わったワインボトルの中を熱湯消毒して移し替え冷蔵庫で保管します。

低温で発酵がゆっくり進むそうです。 
ここでは必ず空気が通るようにしておく事が大切です。
保管する時発酵によるガスの発生で容器が破裂するおそれがあるので、必ず空気が通るようにしておくことが大切です。




約7か月冷蔵庫に入れっぱなしにして保管した
柿酢を味見してみました。
柿の風味もありまろやかでとてもおいしいお酢に仕上がりました。


柿酢に塩とオイルを混ぜてドレッシングを作り柿サラダにかけてみました。
刺激的な酸味のないドレッシングで柿の甘みとよく合っておいしかったです。






最後に、干し柿をキハダの煮汁に漬けて作る「柿砂糖」を作りました。


キハダの樹皮を鍋に入れて10分位煮たたせます。


煮汁にヘタと種子を取り除いた干し柿を浸します。
そのまま冷蔵庫などで4〜5日保管します。

ちなみにキハダの煮汁だけ味見してみましたが、ものすごく苦かったです。(しかも後を引く苦み。)




結局10日間置いてしまいました。

サラサラだった煮汁がトロッとしています。
取り出して味見してみると、キハダの苦味は消えていますが味はしました。

干し柿の風味も感じられる黒砂糖のような結構クセのある味わいです。

普段、白砂糖の味に慣れた私には少し違和感のある甘さでした。

現在のように簡単に砂糖が手に入る時代ではなかった頃、秋になると採れる柿と身近にあったキハダの樹皮を使って作り出した貴重な甘味料だったと言われています。

そして、秋になるとたくさん実をつける甘い柿は昔の人にしてみれば朱色に輝く宝石のように感じられ、これから始まる冬の厳しい季節に向けての活力となったのではないでしょうか?


<今回参考にさせていただいた本>

ふるさと再発見 「御杖の四季と食事」
発行:奈良県御杖村