こんにちはコタツです。
梅雨らしいどんよりした天気が続いている中、我が家の庭のアジサイの花も咲き誇っています。やっぱりアジサイの花は晴れた景色より雨が似合うなぁと思う今日この頃です。
先日、友人から以前私があげたお椀に穴が開いて水が漏れると相談されました。
このお椀は10年位前私が木地の勉強を始めたばかりの時に、研修所の先生の手を借りて(と言うか、ほぼ先生が仕上げた)作った初めての器です。
お椀の底の写真です。矢印の部分に穴が開いています。このお椀は丸太の木を使っているので、木の芯の部分に穴が開いています。
今回は穴を塞いで水漏れを無くし再び使えるようにしたいと思います。
穴にキリを通して均等な丸い穴にします。
穴を埋めるために大きさに合った木を削ります。このお椀はキハダと言う木で作られていて、できれば同じキハダを使うのが良いのですが、適当な材料が無いので今回は欅(けやき)を使います。
欅の端材を割って使います。
大きさが合えばつまようじとかでも良いです。
穴の大きさを確認しながら削ります。
反対側まで通ればokです。
そして、ここで先日鍋の蓋をくっつけた麦漆を使います。
麦漆を塗った木を穴に差し込みます。
このまま漆を固めます。
麦漆が固まったら余分な木をある程度ノコギリで切り落とします。
まず外側から轆轤にセットして少し残った木もろとも挽いて埋めた部分の出っ張りが無くなればokです。
続いて内側を挽きます。
轆轤にセットして回転させると10年前のお椀なので少し木が動いていて微妙にフチがガタガタします。ある程度は仕方がないのでそのまま挽きます。
この木は熱乾燥もせず丸太から一気に仕上げてるので、今までラーメンとか熱い物を入れて使っていた割にはあまり動いて無い印象です。
乾燥して段階を経て仕上げた材料でも下手したら直径のタテヨコで数ミリほど差が出て楕円になる場合があります。
内側を挽き始めたところで、問題が出てきました。
木の中心から放射状に細かいひびのように割れが広がっています。
これは、木目に対して直角に割れる芯割れと言う割れ方です。
この割れは後々広がって来て下手したら仕上がった後にパッカーンと器が割れる事があるので、普段の仕事の時は芯割れが見つかったら、たとえ数ミリでも出荷しません。
裏側は割れていないので、少し深くして割れが取れないか挽いてみます。
少し取れましたが、割れを完全に取り去ることは難しいので、このまま漆を塗る事にします。
漆を割れの部分にしっかり染み込ませるように塗ります。
漆が固まったらペーパーで研ぎます。
その後、また何回か漆を塗り重ねます。
以前の記事で漆を塗る刷毛(はけ)の話をしましたが、毛羽立ちしない布(ジョーゼットが良いらしい)でタンポンを作り塗る方法もあります。
そして、研修所の同級生のT君が教えてくれた方法がこちら。
キッチンの水切りネットを使う方法です。綿をラップで包み、それをネットで包みます。ネットはしっかりした物を選びます。ストッキングタイプと呼ばれる物はうまく塗れないので止めた方がいいです。
手袋も青いので見づらいですが、タンポンの先に漆を付けてクルクル小さい円を描くように塗っています。
一つだけ漆を塗る時は刷毛の手入れがめんどくさいので、タンポンを何個か作っておくとすぐに塗れて便利です。
プロの職人は、人間の髪の毛を使った高価な刷毛を使います。それは、1日100個とかを毎日塗るので耐久性があり、安定した仕事をするために最も良い道具だからです。
最初にテレピンで希釈した漆を塗る時にホームセンターで買って来た刷毛を使った事があります。2〜3回は使えましたが、抜け毛がひどくて使うのを止めました。100均とかで買って使い捨てで使っても良いかもしれません。
あと、歯ブラシとかも簡単な漆塗りに使えそうです。
話は逸れましたが、研ぎの後に6回漆を塗り重ねて完成しました。
高台の中。ちょっとブサイクですが、しっかり埋まっています。
中の埋め木はほとんど目立たなくなっています。ですが、割れはしっかり残っています。
丸い木は最初に芯を抜いて、今回のように違う部位で埋め木をして器を作ると木が割れにくいです。
このお椀が丸木のままで熱い物をを入れても派手に割れなかったのは、キハダの木の特性だと思います。後日師匠に聞いてみると、キハダや漆などの柔らかい木は丸木でも割れにくいそうです。
普段よく使う欅で同じように使ったらすぐにパッカーンとパックマンのように割れたでしょう。
水を入れて1時間位置いておきます。
1時間経過して、下に敷いておいたティッシュペーパーが全然濡れてなかったので修理完了です。
割れが完全に消えていないので、いずれまた水漏れすると思いますがその時にまた考えます。
今回はとりあえず使えるようにするのが目的なので仕事は雑ですが、これでいいのだ!